2013年4月30日火曜日

書籍:色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

著者:村上春樹
評価:☆☆☆☆
カウント:19冊目@2013

2回目。ちょっと批判的に書いてみます。

この話、全体としての物語の弱さは否めないと思います。村上さんによると、短い話を書くつもりが伸びてしまった、ということのようですが、ここまでの長さに耐え切れる力をこの物語が持っているとはどうしても思えません。過去と向き合う、というのは村上さんの中で新しいモチーフのような気がしますが、現実と折り合いをつけられない女性だったり、旅をくぐり抜けて1人の女性と向かい合う姿だったり、ショックな出来事で閉じこもる男性だったり、といったモチーフがこれまでに描かれてきたものと重なりあう部分が多すぎるので、今回の物語の新しさをあまり感じることができません。

今回の本の特徴は、あまり印象的なフレーズが無い点にあるのかもしれません。2度読んでも、思いつくのは、帯にある「良いニュースと悪いニュースがある。」の部分くらいですかね。村上さんの意味深な文章は結構好きなので(例えば、「ゆっくり歩け、たくさん水を飲め」from 1973年のピンボール/アフターダーク、「かたちのあるものと、かたちのないものと、どちらかを選ばなくちゃならないとしたら、かたちのないものを選べ」from 偶然の旅人)、ちょっと寂しかったです。でも、良いニュースと悪いニュースの小話は、少なくともそこに選択の余地があり、自由がある。この話は、掘り下げる価値のある話だと思いますし、結構好きです。

何より、灰田氏や緑川氏の物語が宙に浮いているのがどうしても気持ちが悪い。中途半端な終わり方をする物語に対して私は比較的好意的な立場だと思うけれど(ピタッとピースが揃う必要はないと思っているので)、「ま、これでいいんじゃないの?」とはどうも思えない。灰田だけのエピソードであれば多分は許せたと思うのだけれど、その中に、更に中途半端な緑川の物語を入れ子にしたことで、「あの話、なんだったの?」と戸惑う気持ちが強まっています。読んだあとに印象に残る、というところに狙いがあるとするならば、それは成功していると思うけれど。どうなんでしょ。

以上の感想は、全体的に批判的なトーンですが、私は村上さんの次回作も楽しみにしています。

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