著者:伊坂幸太郎
評価:☆☆☆☆
カウント:85冊目@2012
単行本でも読んでいたんですが、文庫が出版されたということで再読しました。
単行本で読んだ時とは随分と印象が違います。読みにくくてわかりにくい物語、というイメージがものすごく強かったけれど、今回はグイグイと物語に引きこまれました。
「あとがき」によると、文庫化にあたって改稿されているようですが、単行本は既に手放しているので、改稿がどの程度印象の違いに影響を与えているのかはわかりません。
キングたる王求の超然とした姿勢が、この物語の骨格をも支えている。王求の生活は、孤独で、淡々でありながら、確固としている。「他人と違う」ことは当然であり、更に「他人よりも優れている」。そういう人生を生きるのは、なかなかに大変そうです。でも、凡人である私を惹きつけてやみません。
リアリティ溢れる現実世界の中に黒い服の3人の女や緑の獣などが登場する非現実性が織り込まれるグチャグチャとした世界観も良いです。このグチャグチャした世界観が、王求のリアリティの欠けるキャラクタを受け入れ可能なリアルな存在に変化させているんだと思う。
「マクベス」が物語にかなり組み込まれているけれど、こちらは未読なのでその関係性は私にはよくわかりません。「フェアはファウル、ファウルはフェア」の扱いも、私にはいまいちピンと来ないのだけれど。存在とフェアかファウルかの価値判断とは、別の話ってことなんですかね?
この物語、良いと思います。バランスを欠いた小説だとは思うのだけれど、すごく惹きつけられる。心に何かが残る。そういう小説。