評価:☆☆☆☆☆☆
カウント:85冊目@2009
この本はすごい。
近未来(2033年)の火星飛行にまつわるSF小説。日本でSFって結構少ないと思うのだけれど(私が知らないだけ?)、非常にクオリティが高い。テクノロジー的なことを言うと、聞いたことある(開発中みたいなの)技術が大半だが、20年そこそこの近未来なので、それほど違和感もない。
非常に奥深いテーマ性を持っている。大統領選や宇宙ビジネス、科学と倫理感/道徳観の関係、紛争への関与等の取込み方が見事。人間の様々な顔/社会的関係性をdividualsとして描くのも、なかなか説得力がある。
そして、普通だとこれだけのテーマを抱え込むと説教臭くなるところ、サスペンスやラブストーリー等の要素を取り入れてエンターテインメントとして成立させているところがすごい。平野さんがこんなにエンターテインメント性の高い小説を書いたことが意外だけれど、彼の能力の高さが顕著に表れた傑作だと思う。
キッチンズ候補の最大の欠点は、雑なことです。そして、不透明なことです。細かに、丁寧に見なければならない現実の細部を、いつも雄々しい概念や、猛々しいレトリックで押し潰してしまっています。(P390)そう、こういうのが怖い。でも、それが現実。
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