著者:万城目学
評価:☆☆☆☆1/2
カウント:46冊目@2013
万城目学の最新作。現代を舞台としていた「鴨川モルホー」や「鹿男あをによし」等とは違い、豊臣秀吉の没後の時代を舞台とした物語。伊賀忍者である風太郎が主人公です。
かなり長い話だし複雑に絡み合ったストーリーなので要約するのが難しいのだけれど、伊賀を追い出された風太郎が、京都で怠惰な生活を送っていたところ、色々あって(笑)、落城寸前の大阪城に潜入することになるお話です。
忍者が主人公ということで、万城目学が得意とする奇抜な物語かとおもいきや、時代小説ということもあり、ひょうたんから神(なのか?)が出てくるといった多少たわけた事があっても、あまりファンタジー感はありません。忍者が主人公とはいえ、非現実的な術とかは出てこないので、現実的な物語だ、という印象さえ受けます。「鴨川モルホー」とか「鹿男あをによし」とかの方が遊んでる感がありました。
物語の視点は主人公である風太郎に固定されている一人称の小説です。風太郎がやる気のない男なので、堅い感じで物語が進むわけではないのですが、物語全般に、ずっと悲しい予感が漂っています。特に、風太郎が人を殺めることになる辺りからは、物語がグッと重みを増してきます。
そんなわけで、コメディ色が強いドタバタしたファンタジー小説であった「鴨川モルホー」や「鹿男あをによし」とは違い、今回はシリアスとさえ言えると思います。
ボリュームがあり、比較的シリアスな物語でありながらも、読みにくくはありません。ユーモラスなエピソードが散りばめられているし、何より物語が面白いので、最後までグイグイ惹きつけられます。一回物語の世界に入ってしまうと、読むのを止められなくなっちゃいます。
正直言って、この物語であれば、ここまでの分量は要らなかったんじゃないかとは思います。しかしながら、この長さがあるからこそ、読んでいて江戸時代初期(豊臣末期)の時代へ頭がタイムスリップできるんだと思うし、ストーリーの複雑さも増す。何より、物語に奥行きが出ます。「こんなつもりじゃなかったんだけどな」とでも言いそうな風太郎の姿が目に浮かぶような気がするのは、この物語のボリュームがあってこそです。
それにしても、第九章~終章の物語が持つ重みはかなりのものですね。自由と使命について考えさせられるわけで。
ところで、この物語から数百年経った大阪を舞台にした話が「プリンセス・トヨトミ」なんですかね?ちょっとネタバレですけれど。
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