著者:水月昭道
評価:☆☆☆☆
カウント:18冊目@2012
博士課程を修了して、職もなくワーキングプアに陥る人たちの姿とその原因を分析している。この手の話は知っていたし想像してもいたけれども、確かに文系三流大学の博士にターゲットを絞ると、かなり状況は悲惨。そしてこの状況を、文部科学省と大学とが招いている、というのもその通りかもしれない。ワーキングプアやニートの話は、その状況に陥った個人の問題と考えられがちだけれど、そのような構造を作った社会に問題があるのではないか、との著者の意見には賛同する。
しかしながら、著者の意見に完全に賛同できるかというとそうでもない。日本のアカデミズム及び企業の問題は、両者を結び付けようとしないことで、大学側はもっと企業(社会?)の側に寄っていくべきだし、企業は、もっと大学の活かし方を考えるべきだと思う。「社会が悪い」では解決策になっておらず、博士(博士課程修了者も含む)達が、大学に評価されるだけでなく、企業や社会に評価されるアウトプットを出す努力が必要だと考える。人文科学系だと難しいかもしれないというのもわかるけれど、でも、「いかにして自己満足に終わらないか」を考えるのが、一番大事なことではないか。
社会が若者を使い捨てにしている、という意見には賛成。だからこそ、使い捨てにされないためにどうすればいいか、を1人1人が考える必要があるな。ただ、この動きを長期的に見た場合に、日本の未来は明るいかもしれないとも思う。私の出身大学でも、大したアウトプットを出していない大学教員は何人も居たけれども、今後、ちゃんと論文を書いて苦労して、競争をくぐりぬけて研究者になった教員が増えれば、大学の教育制度が改善されていくのではないかと感じる。
一番大きな問題は、終身雇用制ではないかな。企業も含め、もう少し雇用を不安定化した方がいいと思う。
文章はさらさらしていて読みやすい。さすがこの辺りは文系博士。しかし一方で、数値を出すなら、グラフ化その他で視覚的に訴える等の工夫をする必要があると思う。単に数値を並べられてもイメージしづらいし、説得力にも欠ける。
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