2012年3月8日木曜日

書籍:ブログ論壇の誕生

著者:佐々木俊尚
評価:☆☆☆☆
カウント:24冊目@2012

既存メディアの抱える問題と、ネットメディアの興隆とを提示している。タイトルでは「ブログ論壇」と銘打っているが、ブログのみならず2chやニコニコ動画等も含むネットメディア対新聞やTV等の既存メディア、という構図でメディアを論じている。全体的にネットメディアに関する種種雑多な内容を取り扱っているため、総花的で内容がわかりにくくなっている感は否めない。どうせなら、ブログに焦点を絞った方がわかりやすかったように感じる。

「既存メディアが信用を失い、ネットメディアが社会的影響力を増している」というのが大きな主張の1つだが、根拠が薄い。例えば、ネットが炎上したところで、どれくらいの数のユーザが炎上に関わっているのかは全くわからないので(頑張れば、1人でも炎上は起こせる)、リアルの世界とネットの世界との関連性等について、もう少し分析が必要だと思う。少なくとも私は、社会の中で「既存メディアが信用を失っている」印象も、「ネットメディアが影響力を増している」印象も、持っておりません。
但し、この点を補足すると、私個人としては、既存メディアをあまり信用しなくなっているし、ネットからの情報から影響を受ける機会は増えています。ネットの情報は玉石混交とはよく言われる話ではありますが、マスメディアの情報だって十分に玉石混交なわけで、どっちもどっちじゃないかと。つまりは、マスメディアもネットも全て玉石混交の情報源だから、両方並列に扱ってもいいんじゃないかなぁというのが、私の今の考えです(そうすると、マスメディアのビジネスモデルは崩壊しますが)。

この本を読んで私が考えたこと。
ネットの登場によって情報のインフレーションが起こっているので、「提供する情報量を増やす」(情報の薄利多売)か「情報の質を上げる」(質の向上による情報単価の維持)を増やすか、或いは「インフレーションが起こっていない分野で勝負する」か、のいずれかしか、マスメディアが提供する情報の価値(総量)を維持することはできません。この構図は製造業と一緒(ネット上のブロガーたちが新興国で、マスメディアが先進国)。
この点検討すると、情報量の増加はユーザが求めているかどうかは疑わしく(処理しきれない)、質の向上もユーザにはわかりづらい。よって、マスメディア側がこれに対抗するには、「個」が参入しづらい分野に特化していくしかないと考えます。例えば、「編集(特に映像)」とか「一度に提供できる情報量の豊富さ(情報の一覧性は、ネットは新聞には勝てないと思う)」とか「マスだからこそ可能な圧倒的な情報分析力」とかがマスメディアの提供可能な付加価値かな。こうした付加価値の向上を考えずに、「既存の媒体と同一物を有料でネット化」なんてしても、利益に結びつくわけがありません。想像力の欠如も甚だしい。
「知る権利」と言いながら他方でネット規制を訴えるメディアなんて、ちゃんちゃらおかしくて相手してられませんが、情報のインフレを防いでビジネスモデルを維持しようとする点では、まだまともな発想です。

<オススメ度>薄い本なんで、読んでもいいとは思う。ネットに関する種々の社会状況を知りたければ、という感じ。

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